名作品集


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東京バレエ劇場名作品集

このページでは東京バレエ劇場ならではのユニークな作品をご紹介します。

「ラ・ジャーラ」こわれがめ

1955年5月 本邦初演

 原振付:ジャン・ボーラン
 初 演:1924年11月
     パリ、シャンゼリゼ劇場
     <スウェーデン・バレエによる>
 音 楽:アルフレッド・カッセルラー
 再振付・演出:榎本(川島)誠之介
 編 曲:横山青児
 美術・衣裳:森 喬

 バレエ・コミック 1幕3場

【あらすじ】
 傲慢で短気な大地主ロロオの屋敷の庭。小作に使われている村人たちがロロオ自慢の大がめを見ているうちに誤って割ってしまいます。村の青年が勇気を出してロロオにその事実を告げると、案の定、ロロオはかめを元通りにしなければ絶対に許さないとかんかんに怒り出します。そこにロロオの娘ネラが現れて父をなだめます。ネラは実は村の青年の恋人なのです。
 そこに今度は壺職人のデューマ老人が現れますデューマ老人は村人のためにただで大がめを直してあげようとしますが、ロロオが無理矢理お金を老人に握らせ、大がめを直す様に命じます。
 デューマ老人は嫌々かめを直し始めますが、やがて最後の仕上げのためにかめの中に入って仕事をしていた老人は、かめの口がたいそう小さいために、大がめが完全に直った時には自分が外に出られなくなってしまいます。そこで村人たちはかめを壊そうとしますが、ロロオに追い払われてしまいます。困った村人たちは、そこでロロオ自身にかめを壊させる計略を練り始めます。
 その夜、ネラの手引きでロロオの屋敷に入り込んだ村人たちは、飲めや歌えの大騒ぎを始めます。眠りを妨げられたロロオは庭に飛び出し、怒りに任せて大がめを蹴り倒しました。たちまちかめは壊れ、デューマ老人は外に出ることができました。
 見事に計略があたった村人たちはヂューマ老人と大喜びで踊りあいます。そしてただ一人、意地悪なロロオだけが、自分で壊してしまった大切な大がめの前で嘆き悲しんでいるのでした。

「奇妙な店」

1955年5月 本邦初演

 原振付:レオニード・マシーン
 初 演:1919年6月
     ロンドン、アントンブラ座
     <バレエ・リュッスによる>
 音 楽:ロッシーニ<レスピーギ編曲>
 衣裳・装置:アンドレ・ドラン
 再振付・演出:榎本(川島)誠之介
 

 バレエ・コミック 1幕3場












左:榎本誠之介
  <店主>
右:南 麻美
<カンカン人形>

【あらすじ】
 舞台はフランスのとある玩具店です。店主が店に現れて仕事を始めようとすると、店員の一人がカーテンの陰に隠れていた女泥棒を見つけます。店主は女泥棒を引っ張り出しますが、女泥棒は店主の隙を見て逃げてしまいます。
 店主が女泥棒を追いかけて行った間に、まずフランスの貴婦人が店に入って来ます。女泥棒を取り逃がして帰って来ると、今度は金持ちのアメリカ人家族が入って来ます。続いて今度はロシア商人の家族が入って来ます。店主達は次々に様々な人形を取り出して客達に人形を動かせて見せます。中でももっとも客達の興味を惹いたのは店主秘蔵の男女ペアのフレンチ・カンカン・ダンサーの人形でした。見事な踊りを見せる人形達に、ロシア人家族が男のカンカン・ダンサー人形を、アメリカ人家族が女のカンカン・ダンサー人形を買うことを決め、店主の言い値の大金を払って次の日に引き取りに来ることにして帰って行きます。
 誰もいない夜の玩具店。突然人形達が動き始めます。人形達は明日の朝には別れ別れにならなければならないカンカン人形を囲んで踊ります。カンカン人形の二人は愛し合っているのです。
 翌朝、アメリカ人とロシア人がそれぞれのカンカン人形を引き取りに来ます。しかしカンカン人形が無くなっていると店員に告げられた客と店主は、驚いて人形置き場に入って行きます。
 が、次の瞬間、人形達に袋叩きにされて客達は店から逃げ去って行きます。人形達も、そして予期せぬ展開で濡れ手に粟の大金を稼いだ店主も大喜びで踊りあいます。

「長崎物語」

1964年2月初演 <第19回芸術祭参加作品>

 台 本:小林利春   
 振 付:志賀美也子
 演 出:青山圭男   
 作 曲:陶野重雄   
 美 術:三林亮太郎  
 衣 裳:木名瀬慧子
 総監督・制作:榎本(川島)誠之介

 グランド・バレエ 3幕5場
 












南 麻美<蝶々>

【あらすじ】
 長崎の諏訪社の祭礼の日、有名な蛇踊りをアメリカ領事に随行して見物に来たアメリカ海軍士官は、奉納の舞いを舞う美しい娘、蝶々を見染めます。二人の心は通じ合い、蝶々は士官と同じキリスト教に帰依して結婚します。二人は新居を構え、共に暮らしはじめますが、アメリカの海軍士官である夫はやがて国に帰らなければならなくなります。
 夫の帰りを心待ちにしている蝶々のもとに、ある日アメリカ領事が士官の手紙を携えて尋ねて来ます。手紙には実は士官がアメリカでも結婚した事がしたためられていたのですが、領事は蝶々の士官を思う愛の純粋さと、士官が帰国した後に生まれた子どもを見て、とても手紙の内容を蝶々に伝える事が出来ません。かえって子どもの大切にしていた風車をアメリカにいる士官に届けてくれる様に託されて心中暗く帰って行きます。
 その晩、蝶々は夢の中で士官との愛を回想します。翌朝早く、長崎の港にアメリカの軍艦が入港します。軍艦には士官がアメリカ人の夫人を伴って乗っていました。士官は夫人と共に領事に連れられて蝶々の家を訪れますが、自責の念に逃げ去ってしまいます。表の騒ぎに寝室から出てきた蝶々は、アメリカ人女性を見て総てを悟ります。蝶々は子どもを夫人に託すと室内に戻ります。そして胸の十字架を外し、仏壇に手をあわせると結婚の時に持参した短刀に子どもの幸せを祈念し、胸を突くのでした。

西寺/邦楽器による六重奏曲

1966年6月初演

 振付・演出:ロイ・トバイアス
 音 楽:芝 祐靖<西寺>
     山川園松<邦楽器による六重奏曲> 
 美 術:ロイ・トバイアス  
 衣 裳:木名瀬慧子
 制 作:宗方知波
     榎本(川島)誠之介

 共にアブストラクト・バレエ

●これら作品は、ロイ・トバイアスがニューヨークで聞いた「宮中雅曲の夕べ」以来あたためていた純粋邦楽によるバレエ作品として創作されました。
 以下初演時プログラムより引用;この二つのバレエは二人の作曲家の純粋な音楽精神を、基本的なバレエ技術によってのみ強調してみたいと思います。バレエは音楽と同様にロシア人とか、英国人あるいはアメリカ人であるという事は別にして、国際的に劇場舞踊として存在しているものなのです。この二つのバレエは純粋な抽象的表現として振付けられております。日本の音楽であり日本の楽器を使用しますが、日本の舞踊として計画されたものではありません。両者共に現代音楽に振付けされた現代バレエとして演出振付されたものです。 <ロイ・トバイアス>

弦楽セレナーデ

東京バレエ劇場による初演=1966年11月
 原振付:ジョージ・バランチン                       Tokyo Ballet Theater
 音 楽:ピョートル・チャイコフスキー
 衣 裳:ジャン・リュルカ
 初 演:1936年6月
     ニューヨーク
   <スクール・オブ・アメリカ生徒による>
 【東京バレエ劇場初演時】
 再振付・演出:ロイ・トバイアス
 美 術:川口 直次  
 衣 裳:木名瀬慧子
 制 作:宗方知波
     榎本(川島)誠之介

 アブストラクト・バレエ

●チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、Cメジャー<ハ長調>によるバレエで、4つのパートから成り、それぞれエピソード的な断章として扱われていますが、ストーリーがある訳ではありません。クラシック・バレエならではのポーズとパの美しさの粋を巧みなアンサンブルの中に凝縮して見せ、バランチンの傑作のひとつに数えられていますが、バランチン自身の手による改編版も幾つか発表されています
 東京バレエ劇場による弦楽セレナーデは、ロイ・トバイアスが当時まだ在命だったバランチンと東京から頻繁に連絡を取り合いながら再振付・演出した作品です。トバイアスはこの作品について次の
様に語っています。「彼(バランチン)はこの作品の振付時の事を“あの時はただスタジオの中をたまたまうろついている人は誰でも動かしたのさ”と言った。生憎その状況は目下の東京の状況を思わせる。にもかかわらず、このバレエは振付の完全な模範となった。その上、多くの点でバランチン作品の最上の典型となったのである」<東京バレエ劇場による初演時プログラムより>
 こうした日本バレエ界苦難の時代を経て、トバイアス改編版の「弦楽セレナーデ」は、現在でも東京バレエ劇場バレエ団の重要なレパートリーのひとつとなっています。

さむらい

初演=1966年11月
 振付・演出:ロイ・トバイアス
 音 楽:山川 園松
 美 術:川口 直次  
 衣 裳:木名瀬慧子
 制 作:宗方知波
     榎本(川島)誠之介

 バレエ 一幕三場

●ロイ・トバイアスによる一連の日本を題材にした振付作品の中で、もっとも注目を浴びた作品です。それまでの邦楽をバックにしたコンテンポラリー・アブストラクト作品とは異なり、トバイアスが初めて我が国歴史に顕現する伝統的日本精神に取り組んだストーリーのあるバレエだからです。
【あらすじ】
 時代は源平合戦末期です。源氏とのいくさに破れた平家の将、平重均<たいらのしげひと=本来の“ひと”の字はweb上文字化けする恐れがあるためJISコード当て字にて表記>は捕らえられて源頼朝の前に引き出されました。重均は他の討死にした平家一門に準じるべく頼朝に死を願いますが、重均の人柄に感じ入った頼朝はその願いを聞き入れず、かえって重均のために華やかな宴を催します。
 宴には世に聞こえた美貌の舞い姫、千寿ノ姫が招かれます。千寿ノ姫は失意の重均を慰めるべく心を込めて舞いますが、重均の心は晴れません。かえって立ち上がって舞い始めた重均の舞いに込められた悲しい心に感動せぬ者はありませんでした。そして重均が皆の隙を見て逃亡した時も、誰一人それを追う者はありませんでした。誰もが重均が自ら死を選ぶため、逃亡した事を悟っていたからです。
 そしてやがてあっぱれ重均自害の報がもたらされた時、頼朝や千寿ノ姫のみならず、鎌倉幕府の中に感銘を受けぬ者はありませんでした。

ザ・ウイッチ・ボーイ

日本人による初演=1972年12月
 台本・振付:ジャック・カーター
 初 演:1956年5月
     アムステルダム
    <ラージ・ランデン・バレエによる>
 音 楽:レオナルド・ザルツェドー
 衣裳・装置:ノーマン・マクドーウェル
 日本版衣裳制作:大井晴子
 制 作:榎本(川島)誠之介

 バレエ 1幕3場





J.カーター<魔法使い>とG.シヴィリトゥ<ウイッチ・ボーイ>

写真はワシントン・バレエ公演のもの
【あらすじ】
 舞台はアメリカ中西部の町です。町の娘バーバラは大嫌いな牧師に求婚されて山の中に逃げ込みます。山の中でバーバラは魔法使い<ウイッチ>のマントから青年が誕生する不思議な現象を偶然目撃しました。魔法使いのマントから生まれた青年とバーバラは互いを見とめ、やがて不思議な力に導かれて恋に落ちます。
 バーバラは青年を町に連れ帰りますが、町の者たちは二人の関係に人間界とは異なる異質なものを本能的に感じて二人を遠避けます。それどころかバーバラに言い寄った牧師は二人を妬んでバーバラを神の教えに背く者として中傷し、町の男達をけしかけて青年をリンチにかけて殺してしまいます。
 青年の死に悲しみのあまりバーバラも死んでしまいます。そこに神に姿を変えた魔法使いが現れ、青年を魔法の力で蘇らせるのでした。
●この作品は新大陸アメリカにおける民間伝承と、我が国ではあまり知られていないアメリカにおける魔女狩りの歴史に想を得て書かれた作品ですが、魔法使いの衣裳並びにメイクは歌舞伎の欧州公演を見たマクドーウェルにより、その装束、隈取りにヒントを得てデザインされています。
 
J.カーター版

コッペリア

東京バレエ劇場による初演=1971年7月
 原振付:アルトゥール・サン=レオン                   Tokyo Ballet Theater
 音 楽:レオ・ドリーブ
 初 演:1870年5月 パリ・オペラ座
 
 ジャック・カーター再振付版初演:1968年
 <ロンドン・フェスティバル・バレエによる>
 
【東京バレエ劇場初演時】
 美 術:碇山 喬康  
 衣 裳:大井 晴子
 制 作:榎本(川島)誠之介

 バレエ 三幕

●このページでは有名な古典作品は扱わない事を基本としていますが、このジャック・カーター再振付による「コッペリア」だけは、他に類を見ない作品としてここに扱わさせて頂きます。
 カーター版によるコッペリアは、そのロンドンにおける初演時以来、様々に物議をかもしてきました。特にオリジナル版からして暗喩に満ちている第三幕の個々のディベルティスマンは、さらにシンボリックに手を加えられ、一見時代背景を無視した脈絡の無い踊りの様に見えます。しかしながら逆にそれによって目覚めに始まる日々の時の流れは、人生というより大きな時の流れへとスムースに移管されます。
 カーターのこの作品に対する思い入れは殊の外強く、生前、東京バレエ劇場バレエ団によるこの作品の上演時にはほとんど来日し、直接指導を行いました。

人魚姫

1980年7月初演
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